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計画研究: 実験・観測

 A01: 自然ニュートリノ観測と陽子崩壊探索を通して探る新たな素粒子物理
 スーパーカミオカンデ(SK)実験による研究をさらに発展させ、三種類のニュートリノ質量の構造の決定、振動パラメータの精密測定、ニュートリノ振動における太陽物質効果の確認ならびに陽子崩壊事象の発見を目指す。そのために、最新のソフトウェア技術による解析手法の改良をさらに推し進めることによって、大気ニュートリノ観測や陽子崩壊探索については5年以内に統計観測量を1.5倍以上とし、太陽ニュートリノ観測においては観測エネルギー閾値を下げる。また、中性子に敏感なガドリニウムを水に導入する計画にあわせて、中性子数を数えることによる解析の導入も行う。
 将来のハイパーカミオカンデ(HK)に向けた開発も推進する。放射性ラドンの除去や侵入防止技術の高度化、検出器構成要素の低放射化、ならびに低ノイズ光センサーとこれを読み出す専用電子回路の開発と実証試験を SK および試験用水チェレンコフ型検出器を用いて実施、SK の性能を高めるとともに、HK の物理感度をさらに高める。


 A02: 加速器ニュートリノビームで探る素粒子の対称性
 J-PARC陽子加速器とスーパーカミオカンデによる長基線ニュートリノ振動実験T2Kで、CP対称性の破れの検証と振動パラメータ特にニュートリノ質量の背後にある物理を理解する上で重要な混合角θ23の精密測定を推し進める。そのために、ニュートリノ-原子核反応からニュートリノのエネルギーを再構成する際の精度を向上することに特化した、ニュートリノ-原子核反応測定のための新実験をJ-PARCにおいて遂行する。この実験では、原子核写真乾板により反応点から出る全粒子(特に陽子)を測定することで、不定性の大きい原子核反応モデルに制限を与える。また、ニュートリノと反ニュートリノでは、原子核との反応の仕方が異なるため、新実験では電磁石ミューオン測定器を導入して、反応で生成されたミューオンの電荷の符号を決定することによりニュートリノと反ニュートリノの反応を識別する。


 A03: 宇宙ニュートリノ観測の高精度化で探る標準理論を超える粒子信号
 南極氷河中で観測を続けている高エネルギー宇宙ニュートリノ観測実験IceCubeにおいて標準理論を超える物理から期待される宇宙粒子信号の検出を目指す。信号統計量の大幅な増大、ニュートリノ事象形状およびエネルギーの再構成精度の向上にむけ、検出器の拡張であるIceCube-Gen2の建設を開始する。特にIceCube検出器の中心に高感度較正ユニットを導入するGen2-Phase1を構築し、深氷河較正データを基にシミュレーションを改良し、精度向上を図る。
 また、より低いエネルギー感度のあるスーパーカミオカンデ(SK)の測定と連携して、106eVから1015eVを超える幅広いエネルギー領域にわたり新物理の探索を行う。高エネルギー宇宙ニュートリノ探査においては、宇宙線が大気で反応して生成する大気ニュートリノが観測の障壁となってきた。近年取得された最新の宇宙線観測及び加速器測定結果、さらに、これまでに改良されてきた高エネルギーハドロン反応モデルを結集し、幅広いエネルギー領域にわたる世界最高レベルのニュートリノ生成モデルを構築して大気ニュートリノによる系統誤差を抑える。


 A04: ニュートリノ質量和測定・TeV を超える物理の探索を実現する次世代CMB観測
 宇宙背景マイクロ波放射(CMB)の精密測定により、宇宙創生時に生成され現在も宇宙に満ちている背景ニュートリノの存在量やニュートリノの質量を決定する。インフレーションを起源とする原始重力波の探索、そして宇宙初期の相対論的自由度の測定を通した標準理論を超える粒子の探索も行う。このために、Simons ArrayおよびGroundBIRDという現在進められている観測計画に対して、最新の計算機技術(HPC)を駆使したデータ解析を適応し次世代実験にも通用する解析技術を開発する。また、次世代実験CMB-S4に向けた超高感度の受信機・検出器・読み出し系の開発、その性能を発揮する較正手法の検討・開発を行う。物理データ解析については、開発した手法を元にSimons ArrayとGroundBIRDの統合解析を行うほか、可視光データとの統合など、裾野が広がる次世代実験のデータ解析も含めて研究する。

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