スーパーカミオカンデ
スーパーカミオカンデって何?
スーパーカミオカンデとは、ニュートリノ物理やニュートリノ天文学、陽子崩壊といった様々な物理テーマで活躍する、大きな検出器です。
スーパーカミオカンデは岐阜県飛騨市神岡町の神岡鉱山跡の山の中に作られています。大きな水タンクとタンクの内壁にびっしりと取り付けられた光センサからなる検出器です。どこからやってくる粒子であれ、電気を帯びている粒子であれば、水中での光の速さを超えるスピードでスーパーカミオカンデの水タンク内を走り抜ける時にチェレンコフ光と呼ばれる光を出すので、この光を内壁につけた光センサを捕えることで粒子を検出します。そのため、スーパーカミオカンデは大型水チェレンコフ検出器と呼ばれています。
スーパーカミオカンデとニュートリノ
スーパーカミオカンデのような大型の水チェレンコフ検出器はニュートリノ検出器として利用できるため、スーパーカミオカンデではニュートリノを使った様々な物理や天文学がなされています。
特に、京都グループではニュートリノ物理をおしすすめていて、スーパーカミオカンデより295km離れた茨城県東海村にある加速器施設J-PARCからニュートリノビームを打ち込んでニュートリノの性質を調べるT2K実験や、大気中で生成されてスーパーカミオカンデへと降り注ぐ大気ニュートリノ観測に関わっています。
これらの実験では主に、ニュートリノ振動と呼ばれる現象を研究対象としています。これは3つあるニュートリノの種類が時間経過と共に変化し、その変化の仕方が3種類の間を行ったり来たりするために振動と言われています。この振動の仕方には、ニュートリノの質量の謎、ひいては粒子がどのように質量を獲得するかに関するヒントや物質と反物質の非対称性の謎が関わっているので、振動を精密に調べることで、これらの謎に迫ろうとしています。
ニュートリノを捕えるしくみ
スーパーカミオカンデのような水チェレンコフ検出器がニュートリノ検出器として適している理由は比較的簡単に大型化することができるためです。ニュートリノは巷では幽霊粒子と呼ばれるほど、他の物質にぶつからずにすり抜けてしまう性質を強く持っています。このような「ぶつかりにくい粒子」を捕まえるためには、ぶつかる相手を大量に用意する必要があり、水チェレンコフ検出器の場合はタンク内の水がその役割を果たします。
水の中の原子核とぶつかったニュートリノは電子やミューオンと呼ばれる電気を帯びた粒子を放出します。ニュートリノ自身は電気を帯びていないため、チェレンコフ光は出せません。そのため、ニュートリノとして水タンクに入るまでは何のシグナルも出さず、水タンク内からいきなり電気を帯びた粒子が走りだし、チェレンコフ光を出すような現象があれば、それはニュートリノがやって来たのだと考えてよいでしょう。
そのため、チェレンコフ光を出した粒子が、タンク内部で発生したことを保証するために、スーパーカミオカンデの水タンクは二重構造になっています。外から電気を帯びた粒子がやって来た場合は外側の水タンクでも光が検出されるので、外側のタンクに反応があれば、ニュートリノではなかったという判断ができます。
ニュートリノを捕えたい場合には、外から来る電気を帯びた粒子は邪魔者です。地上には空からいつもミューオンと呼ばれる電気を帯びた粒子が降り注いでいるため、これを避けるために、スーパーカミオカンデは山の土の中、鉱山の坑道の奥深くに作られています。(写真は岐阜大 田坂茂樹氏 撮影の坑内)