京都高エネルギー研究室 ニュートリノグループ


新型光検出器開発概要

チェレンコフ検出器の原理と光センサーの性能

スーパーカミオカンデとハイパーカミオカンデは大型水チェレンコフ検出器である。外からきたニュートリノと水(陽子と酸素原子)との反応や陽子崩壊で生成した荷電粒子が水中を通るとき、チェレンコフ光という非常に弱い光を放出する。検出器の内壁にある光センサーでこのチェレンコフ光の強度と放出タイミングを測定して、元のニュートリノのエネルギーや到来方向を知ったり、陽子崩壊の事象であったかを判定する。 従って光センサーの性能は水チェレンコフ検出器全体の性能に大きな影響を与える。例えば、光がセンサーに届いたタイミングの測定精度が良くなったら、ニュートリノ反応あるいは陽子崩壊が起こった場所をもっと精確的に推定でき、偽の事象と区別しやすくなる。

ハイパーカミオカンデに向けた光センサー開発

 スーパーカミオカンデで使われている光センサーは光電子増倍管と呼ばれている。その性能と信頼性は高いが、検出器の観測性能を向上し、経費を削減するため、2種類の新しい光センサーを開発している。

Box & Line 光電子増倍管

一つは「Box & Line光電子増倍管」である。ここで、Box & Lineは光電子増倍管のダイノード構造(信号増幅構造)の名前である。この新型増倍管はVenetian Blindダイノードを使う従来型光電子増倍管より光が届いたタイミングと光量の測定精度が大幅に向上する。

ハイブリッド光検出器

 もう一つは「ハイブリッド光検出器」である。この「ハイブリッド」というのは、真空管と半導体を組み合わせたものという意味で、真空管での高電圧による加速(増倍)による増幅とアバランシェダイオードの中で雪崩増幅の二種類の増倍方法を使うことによる。ダイノードに比べて、半導体による雪崩増幅にかかる時間は短いので、光が届いたタイミングの測定精度は光電子増倍管よりもよくなる。また、真空管の高電圧による一番はじめの増幅が大きいので、光量の分解能も高い。  加えて、アバランシェダイオードはただの半導体であるので、ダイノードより構造が簡単である。そのため、製造コストも抑えられると考えている。

京都グループの貢献

今は、二種類の光センサーとも基本性能の評価及び改良を進めている。京都グループは主にハイブリッド光検出器に関する仕事をしている。例えば増倍率の温度依存性や入力と出力との線形性、プリアンプの改良など。