京都高エネルギー研究室 ニュートリノグループ


ハイパーカミオカンデ

ハイパーカミオカンデって何?

ハイパーカミオカンデとは、スーパーカミオカンデよりも10倍近く大きな水チェレンコフ検出器を作り、ニュートリノ物理やニュートリノ天文学、陽子崩壊といった様々な物理テーマを更に推進していく計画です。

ハイパカミオカンデ計画ではタンクの容積にして5倍近く大きな検出器を2つ作ることが計画されています。また、タンクのサイズが大きくなるため、内部に取り付ける光センサの数はタンクひとつにつき40000本が予定されています。(スーパーカミオカンデは10000本) 基本的な原理はスーパーカミオカンデと同じですが、これまでのものよりも性能のよい光センサの開発や、光センサの信号を読み出すための新しいエレクトロニクスの開発も行なわれています。

ハイパーカミオカンデになってわかること

ハイパーカミオカンデで挑戦できる物理や天文学の謎は、基本的にはスーパーカミオカンデと同じものです。しかし、効果が小さな現象やたまにしか起きないような現象を捕らえる実験では、長い時間をかけて測定を行なわなければならず、スーパーカミオカンデでは結果がでるまで何十年も待たなければならず、現実的には難しいというものもありました。 ハイパーカミオカンデはデータを取るために使用する体積
特に、京都グループではニュートリノ物理をおしすすめていて、スーパーカミオカンデより295km離れた茨城県東海村にある加速器施設J-PARCからニュートリノビームを打ち込んでニュートリノの性質を調べるT2K実験や、大気中で生成されてスーパーカミオカンデへと降り注ぐ大気ニュートリノ観測に関わっています。


これらの実験では主に、ニュートリノ振動と呼ばれる現象を研究対象としています。これは3つあるニュートリノの種類が時間経過と共に変化し、その変化の仕方が3種類の間を行ったり来たりするために振動と言われています。この振動の仕方には、ニュートリノの質量の謎、ひいては粒子がどのように質量を獲得するかに関するヒントや物質と反物質の非対称性の謎が関わっているので、振動を精密に調べることで、これらの謎に迫ろうとしています。

ニュートリノを捕えるしくみ

スーパーカミオカンデのような水チェレンコフ検出器がニュートリノ検出器として適している理由は比較的簡単に大型化することができるためです。ニュートリノは巷では幽霊粒子と呼ばれるほど、他の物質にぶつからずにすり抜けてしまう性質を強く持っています。このような「ぶつかりにくい粒子」を捕まえるためには、ぶつかる相手を大量に用意する必要があり、水チェレンコフ検出器の場合はタンク内の水がその役割を果たします。
水の中の原子核とぶつかったニュートリノは電子やミューオンと呼ばれる電気を帯びた粒子を放出します。ニュートリノ自身は電気を帯びていないため、チェレンコフ光は出せません。そのため、ニュートリノとして水タンクに入るまでは何のシグナルも出さず、水タンク内からいきなり電気を帯びた粒子が走りだし、チェレンコフ光を出すような現象があれば、それはニュートリノがやって来たのだと考えてよいでしょう。


そのため、チェレンコフ光を出した粒子が、タンク内部で発生したことを保証するために、スーパーカミオカンデの水タンクは二重構造になっています。外から電気を帯びた粒子がやって来た場合は外側の水タンクでも光が検出されるので、外側のタンクに反応があれば、ニュートリノではなかったという判断ができます。

ニュートリノを捕えたい場合には、外から来る電気を帯びた粒子は邪魔者です。地上には空からいつもミューオンと呼ばれる電気を帯びた粒子が降り注いでいるため、これを避けるために、スーパーカミオカンデは山の土の中、鉱山の坑道の奥深くに作られています。(写真は岐阜大 田坂茂樹氏 撮影の坑内)