目指すサイエンス
宇宙背景放射(CMB)は、宇宙初期の超高温・高密度状態「ビッグバン」の熱放射の残光です。近年の研究フロンティアはCMBの偏光パターンの精密観測で、空間対称なパターン「Eモード」と、非対称なパターン「Bモード」にわけられます。これらの観測を通して、宇宙創成を支配した物理法則の解明を目指します。
原始の重力波と量子重力
ビッグバンの種火とも比喩される時空の加速度膨張「インフレーション」は、宇宙で最初の重力波「原始重力波」を生成したと考えられています。この原始重力波を捉えるベスト・プローブがCMB偏光です。原始重力波は数度角よりも大きいBモードを刻印します。その検出こそが原始重力波の存在を示す直接証拠になります。また、原始重力波の検出は重力の量子化の実験的検証にもなります。まさに究極の物理実験テーマです。
ニュートリノ質量の絶対値
ニュートリノは質量を有するにも関わらず、銀河ハロー内に局在せず、宇宙に一様に存在する唯一の物質です。これにより銀河団がつくる重力レンズ効果が影響をうけ、その影響度合いはニュートリノ質量の総和によります。重力レンズ効果は、小角度スケールO(0.1˚)のBモードと、大角度スケールO(10˚)のEモードの両者を観測することで分析できます。このニュートリノ質量和の測定は、まだ誰も知らないニュートリノ質量の絶対値を決定する有力な手段です。