ニュートリノとは


 2015年のノーベル物理学賞は、ニュートリノに質量があることを発見した梶田隆章博士とアーサー・マクドナルド博士に贈られました。ニュートリノとは一体何なのでしょうか?ニュートリノの性質や、研究の最前線をご紹介します。


ニュートリノって何?
 ニュートリノは、「ニュートラル=電気を帯びていない」「イノ=(イタリア語で)小さい」 という意味の名前を持った、素粒子のひとつです。  

   


では、素粒子って何?
 素粒子とは、物質を構成する最小の要素です!・・・これだけではよくわかりませんね。
例えば水は、水分子という分子が集まってできていて、それをよく見ると水素原子2個と酸素原子1個がくっついたものになっています。

その原子はどうなっているのかというと、中心にある原子核とそのまわりを回っている電子でできています。

さらに原子核の中を見ていくと、陽子と中性子があります(水素原子核は陽子1つだけです)。この2種類の粒子を核子といいます。

では、核子の中はどうなっているのでしょうか。核子はクォークと呼ばれる粒子が3つ集まってできています。

このクォークや電子が物を構成する最小の要素、つまり素粒子です。現在のところ、これ以上小さく分けることはできないと考えられています。  

   


 素粒子には、6種類のクォークと電子が属する6種類のレプトン、これらの間で力を運ぶゲージ粒子、質量(重さ)を与えるヒッグス粒子があります。さらにそれぞれの素粒子に対して、電気の符号が反対の性質を持つ反粒子と呼ばれるパートナーが存在します。クォークは原子核を作ることからわかるように、非常に強く結びつく素粒子です。逆にレプトンは結びつきが弱く、単体で存在します。 私たちのまわりにある水や花、宇宙、そして私たち自身も、これらの素粒子からできているのです。
 

   

 ニュートリノはこのレプトンの中の粒子です。


ニュートリノの発見!
 1930年、パウリという学者が中性子のことを調べていて、とある問題にぶつかりました。パウリは、電気を帯びていないとても小さくてとても軽い粒子があれば、その問題が解決できると考えました。しかし、どんな物の中もすいすいと通り抜けてしまう、この小さくて軽いお化けのような粒子を見つけることはできないだろうと思っていました。
 3年後、このお化け粒子について研究をしていたフェルミという学者は、これをニュートリノと名づけました。
 1956年、原子炉を使った実験でライネスとカワンという学者が、初めてニュートリノを見つけることに成功しました。ライネスはこの功績により、ノーベル物理学賞を受賞しています。


どんな性質なの?
 たくさんある!
  実は、私たちの周りにはたくさんのニュートリノが飛び交っています。太陽が熱を生み出す過程や星の一生で最後に起きる超新星爆発、原子力発電所などでたくさん生み出されています。1秒間に約100兆個ものニュートリノが私たちの体を通り抜けているのですが、私たちがそれを感じることはありませんし、害もありません。
 姿のみえないお化け粒子
 ニュートリノはプラスの電気もマイナスの電気も帯びていない中性です。それは他の物とくっついたり反発したりしない、つまり影響しないということです。また非常に小さいので原子の中も通り抜けることができます。ニュートリノは私たちの体の中も地球の中もすいすいと通り抜けてしまう、もちろん実験装置の中もさっと通り抜けてしまう、研究者泣かせのお化け粒子なのです。
 質量があった!
 長い間ニュートリノには質量がないと考えられていました。しかし、この常識を打ち破ったのが梶田博士が行っていたスーパーカミオカンデ実験と、マクドナルド博士のSNO(スノー)実験でした。3種類のニュートリノがそれぞれに姿を変えあっているというニュートリノ振動を測定することで、ニュートリノに質量があることを発見しました。素粒子物理学の教科書のような存在である「標準理論」で質量がないとされていたニュートリノが実はそうではなかった!素粒子物理学の世界に一石を投じる衝撃的な発見でした。


何がわかるの?
 ニュートリノは、宇宙の中で光の次に多い素粒子です。その性質を理解することで、宇宙の誕生や物質の起源の謎を解き明かすことができるのではと考えられています。しかし、宇宙を知る上でとても重要な存在であるにもかかわらず、未だ謎の多い粒子なのです。


「ニュートリノフロンティアの融合と進化」って?

 異なる学問分野の研究者が連携して研究を行い、世界で初めてニュートリノにおける「粒子と反粒子の違い」を調べたり、宇宙から来るニュートリノを見て「我々はどうやって生まれてきたのか?」という宇宙創生の謎に挑む研究者のグループです。

 世界最高性能の加速器 J-PARC を使ってニュートリノビームを生成し、岐阜県飛騨市にあるスーパーカミオカンデ でニュートリノ振動を精密に測定しています。(T2K実験)

 原子炉で発生するニュートリノを測定し、同じくニュートリノ振動を研究しています。(ダブルショー実験) さらに、その技術を応用して外部から原子炉をモニターする技術の確立も目指しています。

 大気から降り注ぐニュートリノを観測しています。スーパーカミオカンデでの観測と共に、次世代のニュートリノ検出器「ハイパーカミオカンデ」の開発研究を進めています。

 宇宙起源の高エネルギーニュートリノを観測しています。これにより、これまで見えなかった宇宙の深部を探ります。(IceCubeニュートリノ観測所)

 最先端の素粒子実験装置の開発を行っています。原子炉の保障措置技術の進展、放射線イメージング技術向上等、応用分野への波及効果も期待されています。

 ニュートリノを軸とした、素粒子・原子核・宇宙にまたがった分野横断的な理論研究を展開して、「時空とは何か?」という根源的な謎に迫っています。
 


 このページは素粒子解説サイト「HiggsTan」のイラストを使用しています。
  ひっぐすたんのアニメ:T2K実験(YouTube)
  4コママンガ:ニュートリノだって見えちゃう
  4コママンガ:ニュートリノ・マジック
 など、ニュートリノについてもっと知りたい方は、ぜひ一度ご訪問ください。