この宇宙では物質ばかりで反物質はほとんど観測されていません。
なぜ宇宙では均衡が崩れているのでしょう。
この疑問に対して提唱された仮説は以下のようなものです。
- 宇宙創成直後の超高エネルギーの世界では、粒子と反粒子が対消滅、対生成を繰り返し、それらは同数あった。
- 粒子と反粒子の大部分は宇宙の冷却に伴って対消滅してしまった
(消滅のエネルギーが宇宙の膨張で薄まって、再び対生成することはできなくなった)。
- しかし、粒子と反粒子で反応法則にわずかな違いがあり、その差の分だけ粒子だけが残った。
この粒子と反粒子のわずかな違いが
CPの破れと呼ばれるものです。
なぜCPが破れているのかはまだわかっていません。
しかし6種類以上のクォークが存在すれば理論は必然的にCP対称性を破ってしまうことが
小林・益川によって指摘されています。
CP対称性の破れを実験的に観測することで標準理論を超える新しい物理への足掛かりをつかむことができます。
三世代のクォークとレプトン
| 第一世代 | 第二世代 | 第三世代 |
quark |
u |
c |
t |
d |
s |
b |
lepton |
e |
μ |
τ |
νe |
νμ |
ντ |
クォークとレプトンには少なくとも三つの世代があることがわかっています。
この世代間での状態の混合と混合時の位相がCP対称性の破れを引き起こすと考えられています。
それを記述したのが
Cabbibo-Kobayashi-Maskawa行列(CKM Matrix)と呼ばれるものです。
粒子の崩壊事象や崩壊確率を測定することで、このCKM行列のパラメーターの値を測ることができます。
理論値と実験値は合うのか、それとも標準理論では説明できない現象があるのか、
それを明らかにするための実験の一つに
K中間子稀崩壊実験があります。
CKM行列の非対角成分条件を幾何的に表現したのがユニタリティ三角形です。
CKM行列のパラメーターを測ることはこの三角形の辺、内角、高さを測る事になります。
K中間子稀崩壊である
K→πννでは三角形の高さ
(
KL→π0νν)と一つの辺の長さ(
K+→π+νν)を測る事ができます。
底辺は1に規格化されているので
K→πννだけで
三角形を作る事ができます。
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