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以前のリビジョンの文書です


予備実験

本番実験に向けての各種装置の性能試験や検討のための実験.


Cs137を用いたNaIシンチレータの不均一性の測定

概要

NaIとPMTのセットによるエネルギー測定では,結晶不均一性の差異やシンチレーション光のPMTまでの伝播で減衰が起きるため,エネルギーの損失位置によってエネルギー分解能の変化等が起きることが考えられる.そのためCs137を用いて,本番に用いるNaIシンチレータの測定位置によるエネルギー分解能の違いを測定した.

目的

  • NaI結晶の位置ごとの不均一性エネルギー分解能の測定.

内容

実験概要

線源(Cs137)を用いて,本番実験に用いるNaIとPMTのセットを9つ(それぞれ1から9までのIDを振った)毎に線源の当たる位置を変えて(F,C,Bの三箇所) て,CAMACモジュールのADCを用いてPMTの信号を測定した.

実験手順
  • CAMACで測定できる程度のレート(2,300Hz程度)になるように線源やコリメータの配置を調整(下記参照).
  • オシロスコープで見ながら,PMTにかけるHVを調整して,おおよそADCで測定できる程度(1000pC以下)にした.
  • 回路を設計した(下記参照).
  • 各条件毎に10000イベントを測定した.
実験セットアップ

(図)

  • コリメータ: Pb
  • ソース : Cs137
  • F: cm C: cm B: cm
実験回路

Divideした信号を,オシロスコープを参考にThresholdを?mVにしてDescriminatorをかけて信号が測定できる程度のWidth ?nsのGATEを出力し,もう一方のDivideした生のアナログ信号がADCで測定できるようにDelayを調整してADCに入力した. (回路図)

結果

得たデータをrootで解析し光電ピークと思われるものにGaussのフィットをし,Pedestalは平均値を求めた.結果は以下の通りである.

NaI No. HV(V) pos Pedestal Peak Sigma Resolution
1 1,800 F 100.4 1026 71.38 0.077
C 97.77 998.4 67.77 0.075
B 103.5 927.4 195.0 0.237
2 1,650 F 90.75 1962 99.5 0.053
C 92.57 1958 100.0 0.054
B 93.43 1918 190.7 0.105
3 1,650 F 81.62 1491 61.90 0.044
C 81.86 1523 71.31 0.049
B 81.86 1476 268.4 0.193
4 1,650 F 77.66 1236 52.73 0.046
C 78.71 1233 57.16 0.050
B 77.26 1228 105.8 0.092
5 1,450 F 87.57 1250 81.46 0.070
C 90.25 1270 91.58 0.078
B 84.93 注1 注1 注1
6 1,650 F 80.43 1933 58.81 0.032
C 81.58 1946 74.05 0.040
B 77.09 1932 179.1 0.097
7 1,650 F 94.99 1298 75.97 0.063
C 100.2 1291 76.09 0.064
B 103.1 1218 218.2 0.196
8 1,500 F 88.04 2640 113.9 0.045
C 88.66 2671 103.4 0.040
B 87.04 2617 312.9 0.124
9 1,400 F 79.72 2092 79.19 0.039
C 78.52 2103 74.01 0.037
B 81.38 2092 201.1 0.100
  • 注1 F,Cの時より光電ピークが明らかに小さくなり,右のシフトした位置に大きなピークが出現している.そのため,解析不能.
  • 分解能 Res = Sigma/(Peak-Pedestal) により求められる.

  • X軸はadc count,Y軸はカウント数です.

考察

いづれの個体においても,PMTの近く(B)ではヒストグラムが大きく変化が見られる.具体的には光電ピークでの吸収が減ってその影響でいずれにおいても分解能が大きく劣化していると考えられる.なぜ,そのような事が起こっているのは検討中です.

(羽田野)


プラスチックシンチレータの宇宙線測定によるエネルギースペックの測定

概要

本番に仕様するプラスチックシンチレータのエネルギー較正をおこなうため,予め線源を用いた較正を行ったNaIでサンドイッチして宇宙線を測定する.


光子測定によるPMTの増倍率特性の測定

概要

本番では複数のPMTを合わせた状態で測定を行うため,ゲインの一致が非常に重要となる.そのため,事前に1光子の検出をPMTで行って,HVとGainの関係(gain∝(HV)^α)を調べる.

目的

  • 各NaI+PMTのHVとGainの関係を求める.
  • 可能ならば本実験で使うであろうHV領域での関係を調べたい.

内容(12/22)

実験概要

線源(Cs137)を用いて,本番実験に用いるNaIとPMTのセットを9本+2本(高エネより拝借)に線源137Csを当て,CAMACモジュールのADCを用いてPMTの信号を測定した.このときPMTのHVを変え,その増倍率をみた.

実験手順
  • CAMACで測定できる程度のレート(2,300Hz程度)になるように線源やコリメータの配置を調整.
  • オシロスコープで見ながら,PMTにかけるHVを調整して,おおよそADCで測定できる程度(1000pC以下)にした.
  • 回路を設計した(下記参照).
  • ADCで光電ピークを測定できる範囲でHVを変え,各条件毎に10000イベントを測定した.
実験セットアップ

“Cs137を用いた…測定”とほぼ同じ.(写真)

実験回路
  • PMTからの信号をアンプ(10*10倍)をかませ,divideした.
  • 一方の信号をオシロスコープを参考にThresholdを101.2mVまたは102.3mVとしてDescriminatorをかけてWidth ?nsのGATEを出力した.
  • もう一方のアナログ信号をADC(ch1)で測定できるようにDelayをかけADCに入力した.
備考

Thresholdが小さいところではノイズが多かったので,Thresholdを~100mVから下げずに実験を行った.

結果

  • 得たデータをrootで解析した.
  • 各HVの光電ピークをFWHMでGauss Fitした.
  • その結果が以下の図である.(X軸はadc count,Y軸はカウント数です.)
  • 値についてはこちら(HVの値もこちら)

  • 上のfitで求まったADC値とHV(mV)の関係をfitして求めた.
    • ADC = A * HV ^B
  • その結果が以下の図と表である.

NaI No. A  B  
1 2.22307e-14 ± 1.55264e-16 5.75617 ± 0.001021
2 7.0048e-13 ± 3.9847e-15 5.42418 ± 0.000859221
3 9.65046e-13 ± 4.73607e-15 5.34497 ± 0.000737616
4 4.70566e-13 ± 2.02751e-15 5.42501 ± 0.000643653
5 8.50742e-13 ± 9.15313e-15 5.4235 ± 0.00163972
6 3.17705e-13 ± 3.58173e-14 5.52225 ± 0.0169564
7 2.2223e-13 ± 1.11047e-15 5.57117 ± 0.000751413
8 1.10306e-13 ± 5.76508e-16 5.80096 ± 0.000803161
9 9.1579e-14 ± 5.30659e-16 5.82726 ± 0.000888795
10 1.58219e-14 ± 6.30862e-16 5.93813 ± 0.00594433
11 1.08293e-13 ± 6.90424e-16 5.74943 ± 0.000969852

考察

  • 上の結果から基準となるNaI+PMTとそのHVを決めれば,上の図から他のNaI+PMTのHVも決定できる.
  • この測定では,PMTで増倍された662keVの信号に100倍のアンプをかけた.
    • これを概ね66.2MeVのエネルギーを測定したとする.(PMTとアンプの順序が可換だとする)
    • すると本番で測定する最大エネルギーはこれより低いことから,本番のHVの値はこの測定のHVの値より大きいことがわかる.
  • ~~~本番に向けて(1/2現在)~~~
    • ~50MeVがADCで測定できるようにNaI+PMTのHVを決定する.
      • 宇宙線or線源+アンプ のpeakの位置を調整
      • 後者の調整は,アンプとPMTの順序が可換である仮定に基づく.
      • 後者については一応着手してるとこです.
    • 上の結果から他のNaI+PMTのHVを決定.
      • これは単調増加な関数だから,すぐかける
    • 念の為,Gainが本当に揃っているか確認.
      • 宇宙線
    • Calibration
      • 宇宙線or線源

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試作プラスチックシンチレータを用いた宇宙線の検出並びにデータのFlash ADCを通じた読み出し

概要

本番用プラスチックシンチレータの一層分を試作し,その動作テストの為に最小電離粒子(宇宙線)を用いて安定的に計測していることを確認した. また,その際のDAQシステムとしてFlashADC(以下FADCと略す)を用いて,データを収集し解析を行い使用技術を会得した.

目的

  • 試作プラスチックシンチレータの動作テスト
  • FlashADCの使用方法の習得

内容

プラスチックシンチレータの試作
  • 寸法 : 6cm×20cm×20cm
    • 1cm×20cm×5cmのプラスチックシンチレータを4つ並べたモノを6層積んだものを養生テープで固定.
    • それぞれのシンチレータにファイバーシンチレータ(緑色へ波長変換)を通し,計24本のファイバーを両側共に束ね光学グリスで固めたもの.1)
  • 絵 : (後日掲載予定)
  • 制作過程 : 2017年11月17日 〜 2017年11月20日

(詳細は後日追記?)

実験セットアップ

試作プラスチックレータから出ているファイバーの両端を高さをあわせてそれぞれPMT2本(あけ美,勝太郎)に接触させた. PMTにHVを1500Vかけて,オシロスコープで信号を確認した.充分に遮光を行ったところで,50mVを超えるようなピークが見えて問題ないと確認できた為, FADCを用いて250イベント分のデータを取得した.

ただし,今回の実験ではデータ端子に繋ぐケーブル(SMB)が一本しかなかった為,PMT二本同時にデータを取得はできなかった.

結果

それぞれのイベント毎に電圧値,時間に変換した.各イベント毎でおおむね次のような結果を得た. 画像 それぞれのイベントの様子. 得たデータの各イベントに関して積分をし,得た電荷量を計算し以下のヒストグラムを得た. 平均値は3.0pCで,分散0.7pCであった.

考察

エネルギーについて
  • 検出するものはMIP粒子で2MeV/cmのエネルジー損失とし,垂直に入射したとするとシンチレータ中の計エネルギー損失は12MeV.
  • プラスチックシンチレータのシンチレーション効率を0.02とすると,シンチレーション光の計エネルギーは0.24MeV.
  • この時のシンチレーション光の波長は3eV相当とすると,シンチレーション光の光子数は8*10^4個.
  • ファイバーシンチレータ(波長シフタ)の光の捕集効率は2%,,量子効率は100%,減衰距離(約2,3m)よりファイバー長は十分に短いとすると,伝達される光子数は1.6*10^3個.
  • PMTの量子効率を25%,増幅率を10^6とすると,得られる電子数は4*10^8個である.
  • 電気素量e=1.6*10^-19Cであり,トータル計測される電荷は60pC程度である.

得た結果は想定されたものより,1桁程小さいものである.もし宇宙線が測定できているとしたら,そうなった理由としてはPMTのHVはそれほど大きくかけておらず,十分な増幅率ではなかったことや,シンチレータの劣化によるシンチレーション効率の低下などが考えられる.まずは今後,校正済みのシンチレータと同時測定を行い,ただしく宇宙線イベントを測定しているかを検討していきたい. また,イベント毎の図からわかるようにスレッショルドの起点がずれているのが分かる.これはFADCによるものであると考えられるが,原因が不明である.

エネルギー分解能について

エネルギー分解能はプラスチックシンチレータ自体の特性による低さに起因するものと,もうひとつ解析時の積分による誤差が考えられる. FADCのサンプリングは4nsずつであるがプラスチックシンチレータの減衰時間は10ns程度であり,サンプリング点は数点程度である.そのため,それぞれを 足す積分のやり方では大きな誤差が生じる事が考えられる.今後,各点の間の補完をしたうえでの積分を行う等の対策が必要と考えられる.

付録

FADCの使用方法
  • WaveDump使用コマンド
    • s : データの取得の開始、終了
    • q : 終了
    • w : データのファイルへの書き出し
    • W : データのファイルへの継続的書き出し
    • p : データのプロット
    • P : 継続的にプロット
    • a : プロットのオートスケール
  • WaveDump設定ファイル
    • POST_TRIGGER : 時間オフセット%指定
    • BASELINE_SHIFT : 電圧オフセット%指定
    • PULSE_POLARITY : POSITIVE or NEGATIVE
    • TRIGGER_THRESHOLD : スレショルド大きさ(オフセットからパルス方向へのチャンネル数)
ソースコード
#!/usr/bin/env python
# Read File
with open('wave0.txt','r') as f:
    rawdata = f.readlines()

# Convert Voltage
data = [(int(line)-8192)*2000./16384 for line in rawdata]
# Split for Event
eventlist = zip(*[iter(data)]*1024)
# Add Time Information
time = [i*4.0 for i in range(1024)]
eventlist = [zip(time,event) for event in eventlist]
# Integral voltage
chargelist = [-sum([i[1]/50.*4. for i in event if i[1]<=-0.5]) for event in eventlist]

with open("data.txt","w") as f:
    f.write("#time(ns) \t volage(mV)\n")
    for event in eventlist:
        f.writelines(map(lambda line:'{0[0]}\t{0[1]}\n'.format(line),event))
        f.write("\n\n")

with open("charge.txt","w") as f:
    f.write("#charge(pC)\n")
        f.writelines(map(lambda line:'{0}\n'.format(line),chargelist))

(羽田野)

1)
本番のものはファイバーの末端はクッキーで束ねて処理する予定である.
start/pre_experiment.1514904674.txt.gz · 最終更新: 2022/04/21 08:03 (外部編集)