代表 中家 剛 京都大学大学院理学研究科 助教授 素粒子実験
横山 将志 京都大学大学院理学研究科 助手 素粒子実験

研究の進展状況とこれまでの主な研究成果

本研究では大強度・高輝度加速器でのビームモニターに使用する、ダイアモンド半導体検出器の基礎研究開発を行っている。素粒子物理学の発展は加速器の発展に依るところが大きく、B中間子での粒子・反粒子対称性の破れの発見、ニュートリノ振動の確立は大強度・高輝度加速器に依って達成された成果である。今後より大強度・高輝度の加速器を利用するSuper‐KEKB実験、T2K実験、ILC実験では、ビームをモニターし制御するために、対放射線耐久性が高い検出器の開発研究が必須である。

本研究の主目的は、現在稼働中のKEKBファクトリーや建設中の大強度陽子加速器J-PARC等の大強度・高輝度加速器で使用できる、ダイアモンド半導体検出器を使ったビームモニターを開発することである。平成16年度は、トロント大学で製作されたダイアモンド半導体検出器を入手し、KEK−PSニュートリノビームラインのミューオンモニター実験室に測定器を設置し、ミューオンビームを使って基本性能の評価を行った。検出器には毎パルス104/cm2のミューオンフラックスが照射され、予想された信号を観測することに成功した。次に半導体検出器の基礎パラメータであるバイアス電圧と信号の関係、プラトー曲線を測定した。結果として我々の使用するダイアモンド半導体検出器には500V程度の印加電圧が最適であることがわかった。

次に、基準検出器としてシリコン半導体検出器を併せて設置し、シリコン検出器とダイアモンド検出器間での信号の大きさ、信号の線形性、ノイズの評価、長期安定性等を評価した。信号の大きさは、シリコン検出器よりかなり小さく、今後のダイアモンド半導体製作過程の向上を期待するが、現状でも使用に十分耐えられる性能であることを確認した。信号の線形性と約1週間の長期安定性試験に関しては、問題は特に見つからず安定していた。ノイズに関しては、信号が小さいので我々の測定では問題となったが、
より高いビーム強度で使用する際には、問題ないレベルである。我々の研究の結果、ダイアモンド半導体検出器はビームモニターとして有望な検出器であることが確認され、今後耐放射線特性の評価を含め、更なる基礎研究を遂行していく予定である。

研究成果公表の状況

  1. 久保田 淳、中家 剛、横山 将志、他 "J-PARCニュートリノ実験 ミューオンモニターに用いるダイヤモンド検出器の性能評価", 日本物理学会第59回年次大会、九州大学、2004年3月27日〜30日
  2. J. Kubota, M. Yokoyama, et al. "Results with a CVD diamond at the K2K beam-line", RD42 Collaboration meeting, CERN, Geneva, May 15th, 2004